この記事は日本での帰化申請の生計要件について。
生計要件とは、一言でいえば自分達家族だけで生活が成り立っているか?
それを様々な書面を法務局に提出して、要件を満たしているかを立証します。
生計要件の根拠条文は、国籍法第5条4項に定められています。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
国籍法の条文にもある様に、帰化申請者本人と生計を一にする親族(同居親族)を合わせた形で審査されます。
同居家族が居る方が有利に見えますが…
書類の量や審査項目が増えるので、必ずしも有利とは限らないです。
また国籍法上では、生計要件が免除される類型が存在しますが…
(例えば元日本人や日本人の養子など)
実際の所は、収入を証明する書類の提出が求められ審査されます。
帰化の生計要件の難易度が上昇しています。
以前は自力で生活出来ていれば、要件を満たす扱いでした。
(以前は250万円前後でも大丈夫でしたが…)
2023年辺りから、年収要件が最低300万円以上必要と言われるように。
(扶養家族一人増えると必要年収もアップ)
年収の確認期間も3年程度必要になっています。
以前は永住と帰化を比較すると、帰化の方が要件が軽いと言われていました。
最近は帰化(日本国籍取得)の難易度が上昇して、永住許可申請の生計要件に近づいています。
まずは会社員などの給与所得者が日本国籍を取得する場合について。
帰化申請者で一番多いのが、サラリーマンだと思います。
ポイントは上記の項目が挙げられます。
収入や在職の証明は、納税証明書や在勤及び給与証明書などの書類で行います。
源泉徴収票は法務局からは求められる事は少ないです。
(帰化申請では、証明書として使えない事が多い)
人生は色々なイベントが期せずして起こりうるものです。
帰化申請前に転職することになったり、育児休暇を取る事になったりなど。
帰化申請前の転職は、審査上ではマイナス扱いになります。
(法務局の事前相談で、暫く様子を見ましょうと言われる)
大体、転職後1年間は様子見になるかと。
(転職後1年経ってから帰化申請することに)
理由は収入の安定性が未知数だからです。
転職先の収入やポジションもありますが、会社の水が合わなくて早期退職する可能性もあります。
その様な事情があるため、法務局も一定期間の期間を開けてからの申請を勧めてきます。
また審査中に就労ビザの在留期限が終わる場合、ビザ更新手続きが必要になります。
転職とは別に育休を取る事もあるかと。
帰化申請前に妊娠→育休に入る方も居られます。
この場合、育児休暇が終わってから1年ほど時間を開けてからの申請が良いかと。
理由は収入の減少と育児休暇明けの就業継続です。
育児休暇中は、収入が確実に減ります。
出産手当金や育児休業給付金、児童手当などで給料の70%から50%支給されるかと。
(会社からの給料は無給になる場合が多い)
また育児休暇後に就業を継続するかは、現時点では分からない部分があります。
内閣府の男女共同参画局が発表した第一子出産後の継続就業率は53.1%とあります。
言えば半分の方は出産後に退職している計算です。
参考までに内閣府の調査結果PDFのURLを掲載いたします。
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_45/pdf/s1.pdf
ご興味のある方は上記URLをタップして、データをご覧ください。
申請者ご本人、同居親族で会社経営や自営業(フリーランス)などをされている方も多いと思います。
会社役員や自営業者などの経営者が帰化申請する時の条件です。
(名前だけの役員でも)
会社経営者の役員報酬は、概ね月18万円以上あれば良いと思います。
自営業者は月収という概念が無いので、確定申告の所得額を12で割った数字です。
この辺は会社員と同程度かなと思います。
会社役員や自営業者の場合、税負担を減らすために敢えて収入を減らしている方も居られるかと。
(自営業あるあるですね)
課税証明書に書かれた収入では生計要件を満たさない形になります。
この場合は3年間は、収入を上げていく方向になると思います。
会社経営者の場合、事業の業績も影響します。
基本的に決算が赤字だと法務局の審査はマイナス評価を受けます。
(黒字になってから、申請しましょうと勧められる可能性大)
最近では決算が黒字であるだけではなく、営業利益でも黒字が求められます。
(本業の稼ぎで事業が回っている状態)
見た目の決算が黒字でも、補助金や助成金、建物や資産の売却で利益を出したケースは難しくなっています。
この場合の対処方法は、赤字を解消することにつきます。
あとは本業の収益力を引き上げることも重要です。
少なくとも3年間は黒字をキープする事が重要だと思います。
親族の会社に名前だけ役員に名前を連ねている場合ですが…
報酬ゼロでも帰化審査の対象に入ります。
事業の概要や3年分の納税証明書などが必要になります。
そして会社が赤字の場合、審査に悪影響を及ぼします。
この場合の対応方法は、まずは役員から外れます。
一定期間が過ぎてから帰化申請することになります。
帰化申請前に、会社設立や独立開業する方も居られるかと思います。
この場合も帰化申請は、時間を置く必要がでてきます。
(法務局の事前相談で様子見しましょうと指導される)
起業直後なので、生計の安定性が測れないためです。
時間を置いて事業が軌道に乗るのかを確認することになります。
必要な時間は、概ね以下の通りです。
既存事業が様子見期間が短いのは、決算の数字や実績が上がっているためです。
次に帰化希望者が無職だった場合です。
基本的に帰化申請で無職は不許可になります。
無職で帰化できる場合は、
実質的に上記の2つしかありません。
それ以外の状況で無職だった場合は、まずは就職することです。
就職してから1年経過してから、帰化申請を行うことになるかと。
(この辺は転職した時と同じ様な考え方)
帰化申請の審査は、10か月から1年ほどと長い時間がかかります。
その間に何らかの事情で転職や起業する可能性もあります。
または仕事を辞める方も居られるかもです。
この場合は直ぐに法務局に報告が必要です。
帰化申請した時の前提が大幅に狂うので、法務局の審査はマイナス方向に作用します。
審査に悪影響があるから、何も言わずに放置は厳禁です。
黙っていて、後の発覚した時に不許可リスクが高くなります。
ここからは生計要件で、よく質問される項目をまとめました。
まずは借金や住宅ローン等ですが。
キチンと返済できていれば問題になりません。
返済がストップしていれば、悪い影響が出てきます。
特に裁判沙汰になっていた場合は生計要件を満たさないと判断されます。
次に貯金ですが。
生計の概要や預金通帳の写しを提出するので、貯金も審査されます。
多ければ多いほど有利になると思います。
しかしながら、貯金が少なくても問題ないです。
法務局や入管庁は貯金よりも、安定した給料の方を重視する傾向があります。
持ち家については。
賃貸でも持ち家でも大丈夫です。
審査は特に変わらないかと思います。
(オーバーローンだったら問題あり)
最後に国民年金についてです。
年金は素行要件にカテゴライズされますが…
年金が支払い免除されている場合、生計要件を満たしていないと判断されます。
免除の要件は失業や収入の減少で年金保険料の支払いが困難になった場合です。
免除申請をしている段階で、月額17000円が払えない状況。
以上が帰化申請の生計要件でした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。